年頭所感(福岡県医療ソーシャルワーカー協会会長 浦川雅広)

年頭所感

福岡県医療ソーシャルワーカー協会

会 長  浦 川  雅 広

 

 新年、あけましておめでとうございます。会員の皆様をはじめ、会員所属機関、関係省庁、関係団体の皆様には、日ごろより当協会の活動に多大なるご支援、ご尽力を頂き、心より御礼申し上げます。2020年の年頭にあたり、謹んで所感を申し上げます。

 昨年は、平成の天皇陛下が4月30日に退位され、皇太子徳仁親王殿下が、第126代天皇に即位されました。皇位継承に伴い、元号が「令和」に改まり、10月22日には即位を内外に宣明する「即位礼正殿の儀」が行われ、新しい時代の幕が開けました。また、ラグビー・ワールドカップ(W杯)が日本で開幕し、日本代表は予選リーグ4戦全勝で初の8強入りを果たす快挙を成し遂げ、私たちに多くの勇気と感動を与えてくれました。10月には消費税率が10%へ引上げられ、これまで政府が進めてきた2025年問題を見据えた社会保障・税の一体改革が一区切りを迎えました。この一連の社会保障改革では、急増する高齢者人口にどう対応するかが課題でしたが、2040年には、社会保障の支え手・医療等のサービスの担い手になりうる現役世代の人口が急減することが大きな課題となっています。そのような中で、医療ソーシャルワーカーは、地域包括ケアシステムにおける、医療と介護の連携の架け橋、早期介入による退院支援の充実など、一定の評価を得ていると思っております。

 さて、高齢化が進行する中、介護保険創設時から介護を家族だけの責任とするのではなく、社会全体で支える「介護の社会化」が理念となっていますが、実際は家族を当てにしなければ、生活を支えることが困難なことが多くあります。高齢者の一人暮らしが増える一方で、近所付き合いの減少など、地域の中で孤立する高齢者も多くなっているのでないでしょうか。福岡県医療ソーシャルワーカー協会では、会員の経験と知恵を集めた「身寄りのない患者さんを支援するために~よくある悩みのヒント~」を昨年作成しました。皆様の支援の一助になることを期待しております。今後もこのようなソーシャルワーカーの実践知が重要になると確信しております。

 あるMSWの話です。彼は入退院支援加算算定により、1病棟を専従で担当していました。担当病棟の認知症夫婦を担当することになりました。入院する前の夫婦は、地域で孤立しており、必要な支援は受けていませんでした。医療保険の確認ができず、セルフネグレクトも疑われたため、MSWはすぐに様々な関係機関に働きかけました。その日は、認知症夫婦の対応に追われました。しかし、退院調整の依頼も同時に重なり、同日のうちに退院支援を開始することができませんでした。そのことで、他職種からは病院機能やベッドコントロールについて理解していないと非難を受けました。

 最近は、MSWの実績を在院日数や介入件数、入退院支援加算件数で表すことが増えてきました。ソーシャルワーク実践は個別性が強く、数で表すことは簡単でありません。在院日数や点数だけで評価されることに、葛藤を抱えているのは私だけではないと思います。

 地域包括ケアシステムや診療報酬によってMSWが評価されることで、人員配置の促進、支援が必要な方を早期発見できる環境になりました。限られた医療や介護資源を有効に活用するためには、在院日数短縮は必要なことであります。しかし、支援には患者や家族の個別性があり、一律で数値だけでは表せない部分もあると思います。そのため、個別の実践が評価されるために、実践知を集約し発信していくことが益々重要になります。

 近年の研修は、顔と顔の見える多職種連携が中心となり、ソーシャルワーク実践を検討するような「事例検討会」は影を潜めるようになってきました。今後、益々社会背景は複雑化し、ソーシャルワーク実践力が求められると思われます、そのための研修や指導者の養成が急務と思っています。2021年に九州医療ソーシャルワーカー研修会が福岡県で開催されます。実りある研修会にするため、実行委員会の設置も進めて参ります。今年も地域住民への貢献、医療ソーシャルワーカーの発展に向けた協会活動を一層取り組んでいく所存です。

最後になりますが、この1年の皆様方のご発展と一層のご活躍を祈念しまして、私の新年の挨拶とさせて頂きます。本年もどうぞよろしくお願い致します。